南大東は今、製糖期。



ハーベスターでの刈り取り



サトウキビが届いた



南大東島湖沼群



カヌー散策



モグリンチョ(ダイトウカイツブリ)



バン



ダイトウメジロ



ダイトウヒヨドリ



水路



ミサゴ



カワセミ



ダイサギ

南大東は今、製糖期。
サトウキビ刈りのシーズンです。

大きなハーベスターと呼ばれるキビ刈り機が大きな音を立ててどんどん刈り取って行きます。
しかし、昨年は干ばつと多数接近した台風のせいでサトウキビが伸びず大打撃です。

それでもラム酒工場ではがんばってサトウキビ搾汁でラム酒を作っていました。
いつもの匂いとは違う甘い碧い香りが工場に充満していてワクワクしました。
早く飲んでみたいものです。

南大東島を象徴するものの一つに“池”があります。

最大の大池は40ヘクタール以上あって沖縄県で最大の自然の池で、島のまんなかの北西側には大きな湿地帯が広がっていて大小40以上の池がある日本で最大のカルスト湖沼群です。
大きな池は水路でつながっていて、昔は交通手段にも使われていたそうです。
この池があったから南大東の開拓は成功してたった100年余りで、これまでに繁栄して来たのです。

明治25年大東島開拓が始まって6つの開拓団が南大東島開拓を志したものの、夢敗れて断念していました。
鳥島開拓で財を成した八丈島出身の玉置半右衛門一行が上陸して5日目、トゲ棘のアダンやそびえたつダイトウビロウに阻まれて精根尽き果てていた時、鳥島から乗船した一番の元気者の沖山権蔵老人が一人「俺は池を見た!行こう!」と皆を促しました。
「どうせ向こう島の北大東との間の海を見たのだろう。」と若い者は取り合わず、あいからず行く末を哀れんでいました。

沖山権蔵翁は奥山六郎一人を連れて島の奥へ入って行きました。
六郎に高いダイトウビロウに登らせて眺めさせると、眼下には“池!池!池!”大小13の池を数える事が出来ました。
これで一同勇気を奮い立たせる事が出来たそうです。
この時一番初めに見つけた池には“フロンティアスピリッツの碑”として「権蔵池」と名付けました。

もともと干ばつ地帯の大東諸島では今でもこの池は農業用水として大切に使われています。
南大東生活にはなくてはならないものです。

太平洋の真ん中で唯一淡水が浮かんでいる場所ですから、北はロシアから南はオーストラリアまでを行き来する渡り鳥達にとってはもっとも大切な休息地です。
一年中たくさんの鳥達を目にする事が出来る探鳥地としても別格のところなのです。

大池の南と北には野鳥デッキや野鳥展望台があり、冬のカモやシギ類、夏はアジサシなどを楽しめます。
もしかしたら遠い岸辺にダイトウオオコウモリの昼寝の姿を見ることが出来るかもしれません。
そして池を楽しむのに最適なのが“カヌー散策”です。

目の高さが水面近くなので南大東の雄大な自然にすっぽり包まっているようです。
宿がある「在所」集落に近い「月見橋」の浮き桟橋から漕ぎ出します。

まずは大きな「瓢箪池」で漕ぎ方の練習をしましょう。

視界のかなたには南大東島で「モグリンチョ」と呼ばれている“ダイトウカイツブリ”が「ケレレレレレー!」と潜ったり浮いたりしながら歓迎してくれます(警戒鳴音ですが)。
茂みをのぞけば“アオサギ“がじっとこちらを見ています。
するとふいに“ヨシゴイ”が視界を横切ります。
そろそろ慣れてきたら「月見橋」をくぐって「月見池」に行きましょう。
左は「ショッカラァ」と呼ばれている「潮水池」ですが行き止まりなので右に行きましょう。

奥にまた小さな橋が見えます。
その途中には何だ?船が沈んで舳先だけが水面に突き出ています。

わき目を振らずに橋を越えましょう、水路が続いています。
“フトイ”が林立している向こう側で「クォクオー」と“バン”が赤いクチバシを目立たせないようにそぉっと逃げていきます。
“フトイ”がたくさんあるので漕ぎ方を間違えると舳先を取られて思うとおりに進めません。
“モクマオウ”の倒木もあるので慎重に漕ぎましょう。

この辺に来ると空と水と草木しか目に入りません。
浮世の事がスゥーと頭から抜けて行きます。
頭の上では侵入者をものめずらしそうにのぞきに来た“ダイトウメジロ”がまっ黄きいの喉元を誇らしげに振っています。
「ギェー!ギェー!」と“ダイトウヒヨドリ”は我々に関係なく追いかけっこに夢中になっています。
“フトイ”の林を抜けると「栄太郎池」に突入しました。

水が澄んで見えます。
太陽が底まで届いて“シャジクモ”や“イバラモ”にあたって緑の光と水面のキラキラでここは別世界! お?今の時期は“オオバン”の姿も見えますね。
つがいかな? “モグリンチョ”は親離れできない若鳥が「ピー、ピー」と5羽ぐらい近くにいて付いたり離れたりあっちでポコッこっちでポコッと顔を出したりもぐったりしています。

と思えば、普段超慎重な“カイツブリ”2羽が体当たりしているようです。
なわばり争いか恋の季節も始まるのかもしれません。

左奥にまた水路が見えます。
岸辺にはトゲ棘の“アダン”がびっしり生えています。

入ってゆくとまっすぐな水路が続いています。
水路の岸辺の“モクマオウ”の下に小さく細い“マツバラン”見えました。
“フトイ”が林立していて右に左にスラローム走行です。
バサッと大きな鳥が林の向こうから飛び立ちました。
鷹です。

頭と喉元が白いので“ミサゴ”でしょう。
水路の出口付近で水面近くをせわしなく行き来する鳥がいます。
「ずいぶん低く飛ぶヒヨドリだな」と思ったら青く光った!もっと小さな鳥“カワセミ”でした。

こんなところに“カワセミ”いるんだ。
大東生活5年目で2度目の遭遇です。
綺麗な鳥だな。
水路を抜けると「鴨池」です。

「チュッチュッチュッチュッチュー」もう1羽“カワセミ”がいるようです。
こんなに近くで“カワセミ”が見られるなんて、大東にいてよかった! 左奥に“フトイ”の大群生があります。
そこを抜けると「権蔵池」につづく水路があります。
勢いをつけて突っ込んでオールを取られないようにしながら“フトイ”をつかんで突き進みます、「権蔵池」です。

沖山権蔵たちはどの辺からのぞいたんでしょうか。
大きな空と水面に囲まれて池の真ん中まで来ると小さな島にいるとは思えない感覚です。
“ダイサギ”が「ンカァグワァラー」と鳴きながら飛んできて池に立ちます。

お腹近くまで水に浸かって魚に喰いつきました。
クチバシを振りながら上手に頭から飲み込みました。
岸の枯れ木の上では大きな“ミサゴ”が食事中でした。
近づきすぎて魚を掴んだまま飛び立ってしまいました。

悪い事をした。
ぐるっと廻ってまた同じ樹に止まりました。
そろそろ漕ぎ疲れたので今日は戻ります。
今度いつか大池まで行って見ましょう。

南大東Dongosabows



東 和明

2005年2月19日