台風と南大東島

南大東島と言えば、皆さんはやはり、
“台風”が頭に浮かぶのではないでしょうか?


今年は日本全国にたくさんの台風が上陸して、
甚大な被害を残して行きましたね。

南大東島にもこれまで無いぐらいの数の台風が
近くに寄ってきては通り過ぎて行きました。


しかし、今でも被害の復旧に追われている地域ほどは
家が壊されたり水に浸かったりという
直接的な被害は被りませんでした。


台風に慣れている、または台風の怖さを知っているので、
台風に合わせた生活を送っているからでしょう。
幸い、直撃もまぬがれています。


しかし、今年の台風には悩まされました。

いくら慣れているとはいえ5月から台風が接近し、
9月に入ってからは毎週のように台風の影響で
海が荒れたり強風が吹いたりで、
台風対策に追われ週末ゆっくり休んだ覚えがありません。


一番こたえるのが海で遊べないこと、
漁師さんが漁に出られないことでした。


南大東のご馳走は
やはり島の回りで獲れるマグロではないでしょうか。


キハダマグロで小さなマグロですから
トロの部分はさほど取れませんが
その赤身のおいしさはたぶん日本一でしょう。

深い海からの養分と早い潮にもまれたその身は
“プリップリッ!”で深い味わいです。


毎日でも食べたいご馳走ですが
台風が生まれると真っ先に海が荒れます。

台風の波の方が気象庁の発表よりも早いぐらい。

台風のことは「うみんちゅ“漁師”に聞け!」です。

ここ南大東はサトウキビ農業の島です。

しかし沖縄県でも何番目かに数えられるくらい
降水量が少ない島で、
皮肉にも頼みの綱も台風なのです。

台風が連れて来る雨雲に望みを託しています。


昨年に引き続き今年も
大変な干ばつに農家の皆さんはあえいでいます。


直撃は無いにしても、今年の台風の特徴は強風が長く続くことです。

島を囲んでいる防潮林でもある
幕(ハグ:山)が50mあまりの低い島なので
強風は汐(シオ)を撒き散らすのです。


“良い台風”はそれでも雨で塩を洗い流してくれますが、
今年の“悪い台風”ははじめから強風が吹き荒れて、
過ぎ去った後も強風を残して行くのです。


島の西から南の畑は塩害で見るも無残で
これからどうなるのか想像もつきません。


森の葉っぱも塩をかぶると全部枯れます。

その後にだんだん芽が出て復活して行きますが
今年はその隙を与えずにまた次の塩風が降り注ぐのです。


われらがアイドル「ダイトウオオコウモリ」君にも
かなりなダメージを与えているように思います。

去年まではよく目にすることが出来たコウモリの餌が
ほとんど見られないのです。


ハマイヌビワやガジュマルといった小さなイチジクのような種類が
まったく実を熟していません。

年に何度か実をつけて、
熟する時期は道路が茶色になるぐらい汚していて、
コウモリの食べ跡がたくさん見られますが
その風景がまったく見られないのです。

せいぜい桑の実と若葉ぐらいで
食いつないでいるんじゃないかと思います。


潮をかぶって枯れた林で真っ先に緑の葉をつけるのは桑です。

桑の葉がいっぱい開いて木陰を作ると
次々に他の樹が復活するのです。


こうして何千年もの間、
危機と繁栄を繰り返してきたのでしょうが、
もう少し自然に寄り添って生きてゆける方法はないかと
思案をめぐらしながら
波見の丘で台風の波を眺めています。


眼前の南の港では
50トン級の岩がコロコロと
波に転がされて坂を登っています。


東 和明

2004年11月 7日